マッサージ師と介護との関わり方

マッサージ師と介護との関わり方
超高齢化社会と向き合う
超高齢化社会を迎え、私たちマッサージ師も後期高齢者の方と接する機会が多くなりました。
脳梗塞後遺症やパーキンソン病などのご病気で筋麻痺、関節拘縮を起こしてみえる患者様の悩みも多様です。
そんな中、直面する問題として「マッサージ師が介護の分野にどこまで踏み込むべきか。」という点が挙げられます。
解決策を模索する
日々施術を行い患者様と話をする中で、親しくなると困った事や色々な社会の疑問点や矛盾点を質問されます。
悩みが深いほど、「何か良い解決策を知りませんか?」と患者様やご家族から質問されるのも当然の成り行きだと思います。
私たちも常に勉強して、知識の少ない分野についてはしっかりお調べして患者様の疑問などにも答えれるよう誠心誠意対応をしております。
しかし介護サービスの内容に患者様が満足しているかと言うと満足されていないのが現状です。
国の支援には限界がある
一つ誤解がないように言っておくと、各分野の介護スタッフの方々はしっかり仕事をこなす方がほとんどです。
キチンと仕事をされる方が多く、その働きぶりには頭が下がるばかりです。
今回お話ししている点は国が取り決めたサービス内容の事であり、そこで働くスタッフの話をしているのではありません。
私たちマッサージ師もそうですが、国の取り決めた内容を逸脱して仕事をすることはできませんので、そこのところをご理解して記事を読んで頂けると幸いです。
もちろん介護の分野の上層部も何も対策を打ってないという訳ではなく、介護の現場の実情がよくなるように、国や市町村や自治体などは専門職の意見を聞いて一生懸命改善に取り組まれている事も知っております。
日本は他国の介護サービスの良いとこ取りをしてるので、けして他国に劣る介護サービスではなくむしろ優れているといえ、デメリットをなるべく減らす努力は怠っておりません。
現在の日本での一番の問題点は超がつくほどの高齢化社会であるという事なんです。
そして、財源には限りがあり私たち労働者もある年齢から介護の資金を国民の義務として徴収されています。
それでも足りないのが介護の財源です。
お金の問題が解決しない以上、患者様が満足するようなサービスには行き着かないでしょうね。
現状では「介護保険では必要な人に必要最低限の介護を行っている。」といった方がよいでしょう。
症状の重い方ほど悩みも深い
患者様が満足するサービスが行えなければ、当然ですが利用者からは不満が出ます。
介護の場面での悩み事は人それぞれです。
その中で、症状や病状が重ければ重い患者様ほど悩みは切実です。
それは介護に限らず、いろんな分野で同じことが起こっていることでしょう。
マッサージで往診に伺っていると患者様やご家族と会話をする機会も多くなり、距離が近い存在だけに悩み事を相談されやすいです。
その中で、皆さん切実に悩まれているなと感じる事も多々あり、何か解決策は無いかと私も常々考えています。
正しく正確に伝える
より多くの事を勉強して、正しく正確に伝える。
これは私が患者様の権利やより良い生活のために一番気を遣っているところです。
しかし、情報だけではどうにもならない事も多々あります。
など患者様自身が快適に生活をするうえでマッサージ師にも動いて欲しいという要望もあるのです。
質問されて知らない事については実際に動いて調べます。
ただ、介護の分野に実際に踏み込んで手伝うという事は全く見当違いな事であり、善意で行った事が裏目に出て結局周りに迷惑をかけてしまう結果になる事もあります。
実際に失敗した例

1つ頼みがあるのですが、聞いてくれないかな?

何でしょうか?

この家を売りに出すので快適に住める施設を探して欲しい。

分かりました!いくつか探してみますね!
と受け答えを致しました。
しかし、数日後にケアマネージャーより電話があり
Aさんから施設を探して欲しいとか頼まれましたか?

はい!頼まれました!
余計な事はしないで下さい!情報があり過ぎると本人が混乱してしまうのでやめてください!

そうなんですね!知りませんでした。。。では、施設を探すのをやめます。

参考までにお聞きします。私は今のところ何も動いていませんが、今回の件について何か問題が起こったのでしょうか?
Aさんはあなた以外にも近所の酒屋さんとかいろんな人に声をかけているようなんです!
声をかけられた人達はパンフレットを手あたり次第に持ってくるからAさん宅は資料で山積みになっていて、本人も訳が分からなくなっているんですよ!

なるほど、そうだったんですね!
資料を持ってきたのがあなたでないならこんな電話して申し訳なかったですけど、そういう事情ですので施設の案件については関わらないで欲しいです。

いえいえ、電話をしていただいてよかったです。この件には一切関わりませんので安心してください!
電話でこんなやり取りをしていたのですが、患者様、ケアマネージャー、ヘルパー、訪問入浴、リハビリ師、酒屋さん、マッサージ師とそれぞれの立場と視点があり、よく内情を知らないのに患者様の話を鵜呑みにして行動してしまうとよくないという事に気がつきました。
介護の分野ではケアマネージャーが患者様を管理しています。
「善意の心で誠心誠意頑張ります!」ではなく、総合的にみてその患者様に適した施設は何処なのか、何が最善なのかを考えなくてはいけません。
ケアマネージャーはよく分かっていて「沢山ある施設から本人に合う施設を3~4か所まで絞ってから本人に提示をする。」と言ってみえました。
確かにそれが正しい道筋だし、本人にとってそれが最適ですよね。
介護は素人考えで動くべきではない
素人が集まって無い知恵を絞ってもたいした解決策など思い浮かぶはずもありません。
介護のとりまとめはプロに頼むのが一番です。
介護の分野でのとりまとめはケアマネージャーになります。
この一件以降、介護の分野での出来事は逐一ケアマネージャーに報告をして解決してもらう方針に切り替えました。
最終的にはその方が上手くいきます。
その時だけを見れば善意で動く事も間違いでは無いし患者様にも喜ばれますが、もう少し大きな目線で見ると自己判断は自己満足になりがちであり、正しい行動とはいえません。
どう考え行動するべきか。
訪問医療マッサージに長年携わっているといろいろなことがあります。
患者様の悩み相談にはだいぶ的確な対応が取れるよになってきましたが、どれだけ年月が経って経験を積もうが部外者が口を出したり答えを誘導するべきではないこともあります。
だからこそ、介護のことは介護の専門家に任せて様子をみるスタンスが一番正解なのではと経験上思っております。
「最後まで責任もって面倒をみる。」という言葉を体現できるのはご家族以外では、国家資格を取得してその役職についている人にしかできません。
だからこそ私も鍼灸マッサージ師としてその分野には責任を持って対処しますが、一線を越えて介護の分野に口出しすることも手出しすることもしないと決めております。
医療と介護の情報はたくさん持っていますので、どう行動するべきかとか、今必要なことは何かというアドバイスは得意ですが、介護の分野のことを責任もって最後まで面倒みるということは、最終的には介護職の人にしかできませんよね。
まとめ
Aさんはその後屋敷を引き払って2回施設をお引っ越しされました。
施設って外から見てるとよさそうに見えても、実際に住んでみると思っているイメージと全く違うことがあります。
施設内の様子や内情を知らない素人は下手に介護に口を出さない方がいいのではと思った一件でした。
誠心誠意、患者様の問題解決をしたいという気持ちはみんな共通のものですよね。
ただ、その行動が余計なおせっかいになることが介護の世界では多々あります。
だからこそ、専門分野は専門職に任せるという判断が大事になってくるのです。
自分は鍼灸マッサージ師という専門職に徹しながら、ケアマネージャー含め介護業界とうまく連携を取り信頼関係を築きながらより良い環境を患者様の為に作っていければと思います。