【強揉みには哲学がある】をプロ目線で解説します

【強揉みには哲学がある】をプロ目線で解説します
強揉み派?弱揉み派?
あなたは強揉み派ですか?弱揉み派ですか?
たまたま覗いた5chのスレッドの題材が面白過ぎたので、私の意見を交えて強揉みと医療事故の因果関係について答えを見つけていこうと思います。
患者様にとって最適な力加減を極めることは永遠のテーマですよね。

面白い題材なので取り扱いました!
今回はスレッドの題材に出てくる「指で押した時の圧」のみに注目します。
比較するには相対するものがハッキリしていた方が面白いですが、その対象が「強揉み」か「弱揉み」の2択なのは極端すぎますね。
-スレッドの題材に合わせて基準を決めます-
〇受け手に10といわれたら10の圧で押す施術者を「強揉み」、それ以外の圧は受け手が満足しないので「弱揉み」と定義して話を進めます。
〇はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の免許保有者を「有免許者」、それ以外は「無免許施術者」と表現させて頂きます。
施術を行う時には、マッサージ師の視点、鍼師の視点、灸師の視点があり、今回はマッサージ師の視点に限定してお話を致します。
マッサージの他に鍼灸の資格を持っていると視野が広くなり施術にたいしての視点が全く変わり、強さは圧だけではないという考えになるのですが、マッサージだけで飯を食っている方々の刺激に対する強さの指標は指で押さえる圧だけなのですよね。
「そんな狭い視野で物事を考えていたら、そりゃ医療事故も起こすでしょ。。。」と最初にひとこと言っておきます。
経歴を軽くご紹介
何はともあれ自己紹介を致します。
強揉み専門の治療院に在籍していました
まず最初に私の経歴を軽くお話しすると、若かりし頃は(株)千成マッサージという老舗のマッサージ店で修行を致しました。
(株)千成マッサージ には26年前に入社しましたが、この治療院は強揉みを好む患者様が毎日のように多数訪れる老舗の治療院で、従業員も熟練の強揉みメンバーが揃っていました。(現在は2代目院長の定年引退と共に閉院されました。)
なので強揉みを好む患者様の気持ちはよく分かります。
学歴と仕事の種類について
また、私は中和鍼灸専門学校のマッサージ科に3年、中和医療専門学校のはりきゅう科に3年間通い鍼師、灸師、あん摩・マッサージ・指圧師の資格を取得しております。
学校を卒業し、修業を終え、免許を取得したのちに、寝たきりの方の為の訪問医療マッサージ専門の治療院を独立開業しました。
訪問医療マッサージで難病の患者様と接していると力だけが全てではないことに気がつきますし、その対処法も心得ております。
訪問医療マッサージが弱揉みだとは思ってないのですが、今回のスレッドの題材からすると弱揉みということになるかと思います。
強揉み、弱揉み、どちらの側面も重要だと思っているからこそ、中立の立場で話をしたいと思います。
スレッドの題材は
このスレッドを立てた方は強揉みに誇りとプライドを持って仕事をされているのでしょうね!
強揉みを否定されるのが我慢ならないのかなと思います。
有免許者である私は中立派ですが、受け手が10の圧を求めているのに5の圧で押しても満足して貰えないのは至極当然のことかと思います。

強揉みへの強い愛を感じます!
質問に答えてみよう
スレッドを立てたスレ主の方は強揉み否定派に対してこのような挑戦状を叩きつけています。

この挑戦状とも取れる3つの質問に、私なりの見解を交えて答えていこうと思います。
質問の内容は皆さんが気になるポイントでもありますよね。
1、強揉みで「どの様な危険な事」が起きるのか、起きた事例を示せ
事故は実際に存在します。
整体、カイロプラクティック、リラクゼーション、マッサージ等の施術者による事故のグラフを消費者庁が出しておりますので参考までに載せておきます。

症状の内訳の1位は「神経や脊髄の損傷」なのですね。
意外というか、いったいどんな施術をするとそんな事故が起こるのか疑問しかありません。
誤解のないように補足すると、このグラフは首や腰をひねるようにスライドさせてバキバキ音を出すような治療も含まれております。
無資格者が整体やカイロプラクティックを行うのであれば、強揉みよりむしろこっちの方が危険度が高いですよね。
強揉みだけが事故の原因では決してありません。
話を戻して、強揉みをして事故を起こした時に「受け手が10の力でやれと言ったから言われた通りにマッサージしただけなんだよ!」と言っても言い訳にもなりませんよね。
私自身は医療事故を起こした事がないので実例をあげてご説明することは出来ないのですが、医療事故を起こさないやり方であればお伝えすることができます。
事故には「防げる事故」と「防げない事故」があり、未然に防げる対策は万全にしておきましょう。

事故は未然に防ぎたいですよね!

デメリットを知っていたら絶対にやらない手技も、無知ゆえにできてしまう怖さがあります。
ざっと思い付いたことを羅列しましたが、大まかにはそんな事に気をつけながら私はマッサージを致しております。
強揉みでの医療事故は施術者側の技術や考え方に問題があることが多いです。
無免許、有免許関係なく普段からどんなことに気を配っているかで事故を起こす確率は変化します。
施術者側は「強揉みで事故なんて起こす訳ないだろ!」とイキるのではなく100人、1000人、10000人と施術する中で万に一つも事故を起こさない施術のやり方を身に付ける必要があります。
私達は安心・安全を訪れた患者様に提供する義務があります。
安心・安全をお届けする意識で仕事をしていないと、思わぬ所で事故は起こります。

事故を起こす施術者はどんな心理状況なのかな?

自分が事故と隣り合わせの綱渡をしている自覚が無い場合が多いです。
実際に攻めすぎた結果、施術中に事故を起こして賠償請求された同僚を何人か知っています。(無資格の施術者で現在は揉みほぐしのリラクゼーション店に勤めています)
技術にかなりの自信を持った熟練の施術者です。
同僚とは言っても先輩にあたりますし、マッサージの技術に絶対の自信をお持ちのようなので後輩の私からは何も口出しは出来ないのですが、その人達は普段からその兆候が見え隠れしていました。
知識ではなく経験に頼る施術者はこの辺りの常識が欠けているのではないでしょうか。
私の治療院は有免許者しか採用致しませんが、ひと昔前の職場では免許が有っても無くても関係なく仲良く仕事をしておりましたし、暗黙の了解で年功序列でした。
年功序列なので無免許施術者の方が立場が上ということも普通にありましたし、私達が学校に行っている間も仕事ができる訳ですがら収入も良さそうでした。
今では考えられない事ですが、25年以上前は職場内での免許の重要性は薄かったように思います。
鍼灸マッサージの学校に通ってる場合には独立開業に向けて先輩方が親身になって技術を教えてくれたので、とても有難い環境で修行させて貰えたなと今でも感謝しております。

勉強している施術者の方が安全そうだニャ!

無免許でも私たち有免許者と同じだけの勉強をしていれば別なのですが、そういう意識が高い人なら学校に入って免許を取得しようとするはずです。
無免許の方を批判したい訳ではないのですが、医療事故の撲滅の為には少々批判めいた表現になってしまいます。
マッサージの学校に通っておらず経験が第一の施術者の場合、専業で仕事をすれば技術はずば抜けると思いますが、医療分野の勉強不足が原因の最低限の常識の欠如は否めません。
私は仲良くなった若手の無免許施術者には必ず学校に通って免許を取得するように薦めております。
3年間学校に通って勉強して免許を取得すると視野が広がり基礎的な知識が身につきます。
医療専門の学校に行き、老舗の治療院などで修行することで事故の確率は格段に下がるはずです。
どんな事故が起こるのかを知ることも大切ですが、事故を起こさない施術のやり方を身につけることも大事かと思います。

結論、事故は起こるべくして起きてるのだニャ!
2、強揉みとは「どの程度の強さ」を言っているのか、自身でどの位検証しているのか?
これは質問者がご自身ですでに回答されていると思うのですが、受け手が10の圧を求めているのであれば、10の圧でマッサージを行えば相手は満足するのではないでしょうか?
この考えは強揉みを受けたい患者様にとっては満点の考え方だと思いますが、私の考えは全く違います。

揉み返しのない強揉みができるならゴッドハンドですよね。

熟練の技をみたことがありますが、「強く」というより技で効かせて緩める感じでしたよ。
マッサージの力加減は「施術者側」と「受け手」で感覚にズレがあります。
施術者の指の形、指の太さ、関節の柔らかさの違いでも「受け手」の感じ方は違います。
女性の細い指の方が押された時に食い込んでくるような痛さを感じることもあります。
反対に男性の太い指ならではの気持ち良さを感じることもあります。
効いたという感覚、痛気持ちいいという感覚は一概に押さえた圧力だけではないことを知っておきましょう。
あと、施術の焦点を何処に合わせるかで、施術にたいする視点はガラリと変わります。
5chのスレ主は有免許者か無免許施術者なのか分かりませんが、施術を行う中で強揉みに活路を見い出したのでしょうね。
その視点もまた間違いではなく、強揉み一本で行こうと決めたなら是非それを貫いていって欲しいなと思います。

治療院の看板を掲げると単に肩が凝っただけではなく、何かしらのご病気を抱えた方の治療をする機会が増えます。
私達有免許者は、治療院又は往診でご病気の方をマッサージする機会が多いです。
そういう真に療養を必要とする方々を対象にして物事を考えていくと、強揉みの検証などする必要性が薄いことに気がつきます。

特に往診では重篤なご病気を抱えている患者様が多いです!
私の経験上、通院治療で強揉みを求めてくる方の大半は週に1度くらいしか治療に来ません。
「週に1度来るなら良いのでは?」と思うかもしれませんが、そんな強揉みをしないといけないような身体なら週に2回か3回に回数を増やして7割の力でマッサージを受けるやり方に変えるべきであり、そういう提案を施術者側からしてみてもよいかと思います。

施術プランや理由に納得できたなら施術回数を増やしてもよいかも!
施術回数を増やせば、そんなに強い力でマッサージしなくても済む場合がほとんどです。
ただ単に強い刺激を求めているだけの方の場合には適した対応ではありませんが、回数を増やすことで解決するならそう患者様に伝えるべきです。
施術者側からお身体の状態をさらによくする最善の提案をすることもプロとして大事なことかと思います。

施術者側からの提案も大事です。
3、強揉みは一度でも危険なのか、それとも何回も行うと危険なのか?
強揉みの危険性は回数の問題ではありません。
そこに物事の本質はありません。
強い刺激で100回マッサージを行っても何ともない強い身体の持ち主もいるでしょう。
しかし、施術を受けたその日にたまたま体調が悪い場合もありますよね。

確かに、体調が悪い時にはやさしくマッサージして欲しいかも!
何かしらのご病気を抱えており、少しずつ患者様の身体が弱っていることに施術者が気付けなかったり、体調の悪さの影には大きな病気が隠れていて、すぐに病院に行って検査を受けるべきタイミングなのに間違えてマッサージに来てしまう人もいます。

大きな病気の兆候をみつけたら、すぐに病院に行くことを勧めるという意識を常に持ちましょう!
損害賠償保険について
強揉みでの医療事故は未然に防げる場合が殆どです。(※技術的に未熟だから医療事故を起こした場合はこの限りではありません)
しかし、そうやって最大限に気をつけていても防げない偶発的な事故もあります。
なので治療院を開業している有免許者は、施術事故が起こった時の為に損害賠償保険に加入しています。
どれだけ注意していても予想しない事故が起こる可能性は0にはなりません。
可能性が0でない以上、何かあった時の為に損害賠償保険に加入するのは患者様の為でもあります。
医療事故があった時の対応も決まっており、損害保証のプロの保険会社のマニュアルに沿って対応します。
行き当たりばったりの対応ではなく、事前に全て決まっているのです。
ちなみに、損害賠償保険に加入できるのは有免許者だけです。
その辺りのサポートの違いも重要だと私は思います。

保険会社の存在意義は物事には100%の安全はないというところなのですよね。

有免許者だけ保険に入れるのは、裏を返せば有免許者は事故を起こしにくいということ。

治療院と無免許施術者との差はこんなところにもあるのだニャ!
まとめ
強揉み中立派としての意見を記事にまとめてみましたが、参考になったでしょうか?
強揉みでの施術事故が起こる場合は、起こるべくして事故が起こっていると私は考えております。
いかにして危険な行為を避けて安全に施術を行っていくかがプロに問われる最低限の常識かと思います。
患者様の満足度も大事です、しかし、強揉み希望の方も身体を壊すほどのマッサージを望んでいる訳ではありません。
強揉みだけにこだわったり、患者様の満足度ばかりに目を向けていると、思わぬ事故に繋がります。
治療院を長く経営していくには「強揉み希望者」とどのように向き合い対処するのかが重要です。
何が正しいのか、安全に施術を行うにはどうしたらよいかは修業時に指導者が最初に教えるべきであり、最低限の常識として理解しておくと事故は減らせます。
そうすることで顧客との信頼関係はより強いものになるのではと当院では考えております。